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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第306号(2016.07.22)

上海感想

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1.上海感想(論長論短 No.273)
2.世界最大のグローバル企業データベースの特徴とは?
 (東京商工リサーチの河原光雄社長・連載 最終回)


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■1.論長論短 No.273

上海感想
宋 文洲

今週ローソンの記念行事で上海に行き会場である知人に会いました。彼は東大を卒業してから旧財務省に入り米国留学した後マッキンゼーに入りました。
まさに絵に描いたようなエリートですが、その彼は数年前に上海で起業しました。

「宋さん、いつもメルマガを読んでるよ」と、彼が声をかけてくれ「いえいえあんな独断なメルマガで申し訳ないよ」と私が答えました。

すると、彼が「実は僕も中国で見たことと感じたことをツイッターに投稿すると『あなたは中国に洗脳されている』とよく言われます。事実を言っているだけなのに」と言いました。

日中関係が悪いのは事実です。統計からも分かるように日本の反中感情は中国の反日感情よりもはるかに高いです。そのおかげで日本のメディアの中国関連の情報はマイナスなものばかりで、反中感情のない方々も嫌中になってしまうのです。

中国人の日本への感情も複雑ですが、歴史問題ではない限り反日とは言えないのです。たくさんの観光客が日本を訪れ、ほぼ100%日本を褒める感想をWeChatなどに投稿するように、現実の日本社会への好意が目立ちます。政府系のメディアを含め、政治以外の話題で日本を貶す内容はなかなか見つかりません。

「一億総嫌中」が進む中、中国を観光する日本人はなかなか居ないだろうと思っていましたが、上海空港で最もよく耳にする外国語の一つは日本語でした。
調べてみると上海駐在の日本人は10万人以上で、世界のどこの街よりも多いことが分かりました。

「日中関係は実は悪くないのでは」と思うかもしれませんが、上海に来る日本人と日本にくる中国人とはかなり意味が違うようです。日本に来る中国人が日本文化と日本社会そのものに興味を持つことに対して、上海に来る日本人は殆どビジネス関連です。

人件費高騰で製造系の日本企業が東南アジアに移る一方で消費系の日本企業は中国展開を拡大しているのです。ローソンの店舗数の伸びや収益構造の改善をみてきましたが、まさに日本メディアの「中国経済崩壊論」が盛んなここ2年で確実に実りました。ニトリさんもここ2、3年の間に中国進出を始めました。昔、日本メディアが中国進出を促す空気の中で似鳥さんが私に「俺は米国で成功してから中国に行く」と教えてくれました。3年前に急に相談に来られた時に「どうして変わったの」とご本人に聞くと「中国に行かないリスクを感じるようになった」と言いました。

「人件費の高騰」は安い人件費に依存する付加価値の低い加工業経営者の言葉です。消費者や消費系企業にとって「人件費高騰」は「購買力の成長」であり、成り立たなかったビジネスが急速に成り立ち始めるサインです。

中国経済減速の本質は過剰になった加工業や不動産関連産業への淘汰です。
裏を返せばそれは産業構造の変革の始まりでもあるのです。淘汰があってこそ新しい技術と産業が生まれるのです。ビジネス感覚のある人がこのことを現場で感じ取り日本メディアの世論と関係なく中国、特にその先進地域の上海でビジネスを展開するのも納得します。

中国崩壊論で稼ぐコメンテーターに「あの宋さんも人民元を売った」と言われました。ご本人に「なぜそんな嘘を言うのですか」と聞くと「いいえ、『売ったはず』と推測しただけです」と言い変えました。思い込みを言って思い込みの観客に自分を売るビジネスも立派なビジネスですが、ビジネスマンはそれを信じてビジネスをする訳にも行きません。

ご存じのように高い利益を得る企業と個人は常に少数です。マスコミの影響を受ける人が利益を出せないのは当然です。冒頭でふれた知人は英語や中国語ができて世界中の現場を知っているから本当の情報を得ているのです。
縮んでいる日本に縮んでいる日本メディアとは訳が違うのです。

P.S.
「縮んでいる日本」という表現に不満の方はここ数年のGDPと実質個人所得のデータを調べて下さい。まあこんなことを言うから嫌われるのですね。

(終わり)

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■2.東京商工リサーチの河原光雄社長・連載 最終回

世界最大のグローバル企業データベースの特徴とは?

河原 光雄

こんにちは。東京商工リサーチ(TSR)の河原です。

Dun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート)との繋がりを何度か書かせていただきました。同社が軸となり全世界で最大となる企業調査会社のネットワーク、D&BWWN(D&B Worldwide Network)が結成されています。
同ネットワークにより全世界の企業情報が日々更新され、米国からアフリカの企業に至るまで全世界の企業を同一基準としたGBR(グローバルビジネスランキング)を提供し、全世界の企業にお役立ていただいています。

D&BWWNでは実務レベルの会議は四半期単位や必要によっては日々行われていますが、例年メンバー企業のトップが一堂に会するカンファレンスがあり、今年は5月にポルトガルで開催されました。今年の話題はデータのニーズは更なる高まりを見せているが、単なるデータ販売ではなく、今までに培ってきた企業成長のノウハウを十分に生かしたアナリティクスを踏まえた情報提供に重点が置かれたものとなりました。

企業信用調査など過去には出来ないであろうと思われた、中国やロシアにも現在ではD&BWWNのメンバー企業があり、社会体制の違いはあってもTSR同様に日々企業情報を更新し世界の企業に情報を届けています。中国には「華夏 D&B China」、ロシアは「interfax」となります。

前述のD&BWWNカンファレンスとして2008年に北京にて、翌2009年にはモスクワで開催されました。当時は新メンバーが加わる際には新加盟国でカンファレンスが行われ、工夫を凝らした歓迎で迎えてくれます。「人民大会堂」や「クレムリン」での晩餐会など、すばらしい経験もさせていただきました。

モスクワのカンファレンスで新メンバーとなったinterfax(ロシアの通信社)の代表の挨拶が印象に残っています。「私たちのinterfaxはソビエト崩壊時にできました。当時は新聞、テレビ、ラジオすべての報道機関が政府のコントロール下にあり、正しい情報は海外に流れていなかった。その時に何とかしてソビエトの状況を海外に伝えたいと考え、活用した方法を今も社名にしています」。

活用した方法とは何でしょうか。そうです「FAX」です。情報統制下でも盲点ともいえるFAXを使いソビエト崩壊の状況を全世界に伝えたのです。
目の前にあっても意識しなかった道具が、発想の転換で情報発信ツールとなったのです。

最近であればトルコのクーデターの際に、エルドアン大統領がスマホにより、テレビ中継にて国民に呼びかけたことも話題になりました。

「必要」は発明の母とも云われます。熱望する気持ちが発想を生み現実を変えてゆくことは今後も変わらないでしょう。しかし今や認識すらしていなかった「無自覚の必要さ」も発想豊かな発明者(自覚者)から与えられる時代にもなりました。ここれは、前回の宋メールで紹介させて頂いた新しいビジネスモデルに代表されるように、あらゆるビジネスにおいても発想の転換や創意工夫などの付加価値を加える事で、利用者の満足という形で実現されています。

私たちTSRも今一度、気付きの心を大切にして環境変化の激しい時代を突き進んで行きたいと考えています。

近年のグローバルビジネスを取り巻く環境は、中国経済の低迷や中東・ヨーロッパの地政学リスクによって一層不透明感が増しています。しかし、国内消費が縮小する中で継続的に事業を拡大するには、大企業だけでなく中小企業も積極的に海外市場を狙っていくことが求められます。海外ビジネスに携わる方にとって、今回お話したチャイナリスクやグローバル企業データベースの内容が、少しでも読者の皆様の海外リスク管理のお役に立つことができれば幸いです。
最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。

(終わり)

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