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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第289号(2015.11.27)

出逢いは運、別れは努力


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1.出逢いは運、別れは努力(論長論短 No.256)
2.投票行動は操作できるか?――ニューロポリティクスへの招待【後編】
  (脳科学者 中野信子さんの連載 第2回)


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■1.論長論短 No.256

出逢いは運、別れは努力
宋 文洲

50代の彼は中小企業の役員を務めていました。会社の隣の食堂にランチにいって15歳下の彼女と恋に落ちました。恋は15年間も続いたのですが、とうとう奥さんに発覚しました。

奥さんに別れを迫られて彼は彼女と別れることにしました。それから10年後、彼は退職しました。毎日家に居ると奥さんとの喧嘩が絶えず、とうとう「タクシードライバーをやりなさい」と言われました。

お金に困っているからではなく、家に居なくて済むとの理由で70歳の彼はいま東京の街をタクシーで走っています。

私は彼のタクシーに乗った時に、その不慣れな操作をみて「もともと違う商売をしていたでしょう?」とか「いまお歳はいくつ?」とか「なぜこんな商売を始めたのか?」などの雑談から入ってとうとう不倫や奥さんとの不仲まで聞いてしまいました。

「馬鹿なことしましたね。なぜ彼女と結婚しなかったの?」と私がいうと「はい。娘にも同じことを言われました。後悔しています。結局、家内とも仲良くなれずこんな惨めな老後に・・・。」と彼は嘆きました。

よく行く食堂などで異性に声をかけて出逢いを果たすことは運です。それを幸福に繋げるには大変な努力が必要です。その不倫相手と早く別れることも努力ですが、奥さんと別れることも努力です。出逢いだけを楽しんで別れの努力をしない彼は怠け者であり、幸せになる資格がないのです。

人間社会にある永遠の方程式があります。それは

出逢いの数=別れの数

という方程式です。

さきほどの彼は早く奥さんと出逢って遅れて彼女と出逢いました。彼女とは早く別れましたが、死ぬ時に奥さんと別れます。努力しないから好きな彼女と早く別れ、冷え切った奥さんと死ぬまで我慢してしまうのです。

人々はロマンと希望を込めて出逢うことを語るのですが、別れることを前向きに考えないのです。この傾向は特に日本人に強い気がします。サラリーマンの転職率の低さと経営者の流動性の低さもここに起因するのでしょう。組織や家庭の形式は安定するのですが、才能や幸福などの中身が疎かになります。

「水が入っている茶碗でお茶を飲めない。」出逢いが先にあって別れが後にあると思う方が多いと思いますが、真実は逆なのです。良い別れがあってこそ、良い出逢いが可能です。良い別れとは悪い現状と別れを告げることです。
別れる時に良い出逢いが保証されている訳ではないのですが、勇気を持って悪い現状と別れることは大切なのです。

タクシーで老後を送っている彼が不幸になるのは当然です。稀にみる幸せな出逢いがあったのだから奥さんに別れを告げればいいのにその勇気さえもなかったからです。彼女と奥さんを二人とも不幸にしたこの男性は幸せになれる訳がありません。

私は決して不倫と離婚を勧めている訳ではありません。初婚でずっと幸せな友人もいれば、5回も離婚してやっと幸せになった友人もいます。仮面夫婦を数十年間も続けて淋しい老後を送る友人もたくさん知っています。
他人の選択に私は口を挟む趣味はありません。

今日はどうやって幸せになるかについて独断を述べたかったのです。
出逢いは運であり、別れは努力である。別れは先にあり、出逢いは後にある。
この道理は人生や事業の転換にも通じると思いませんか。

(終わり)

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■2.脳科学者 中野信子さんの連載 第2回

投票行動は操作できるか?――ニューロポリティクスへの招待【後編】
中野 信子

安倍内閣では女性閣僚たちの活躍が期待されているが、どうも一筋縄ではいかないようだ。いつかヒラリー・クリントン氏のように強烈な印象を与える、有権者にとって分かりやすいアイコンが出てくると(観察する側としては)非常に面白い。

また、さらに興味深いことには、ヒラリー・クリントン氏の写真を見せた後、スピーチしているビデオを見せると、あまり活動していなかった男性の脳が、活発に彼女に対する興味を示すようになったという。

逆に、ジュリアーニ氏に対しては、この反対の反応が見られた。つまり、反応は男性と女性で大きく違い、写真を見せた時は、男性で、ジュリアーニ氏に対する反応がより大きかった。しかし、演説しているビデオを見せると、女性もジュリアーニ氏に対する反応がぐっと大きくなったのである。

つまりこれは、ポスターだけではなく、やはり動いている候補者を有権者に直接みせることができる街頭演説や、テレビ出演がいかに効果的か、ということを示しているのである。

これらのデータはピアレビューを通ったものではなく、研究者が一般紙にそのデータを載せてしまったということでも議論を呼んだ実験だった。
実験者の恣意的な解釈が許される状況下で正しく結論を導くことは難しいが、政治的な行動について脳科学が知見を与え得る、そして、データをもとにある程度の操作が可能であることを示唆したという点では看過できない実験だったといえるだろう。

自分の感情の動きや、自分の心理について、よくわかっているつもりでいても、無意識化された意思決定プロセスについては、把握したりコントロールしたりすることは極めて困難だ。

大半は、「自分でもなぜ、この人に投票しているのかわからない」というのが本音だろう。もちろん、有権者は、「自分の意思で投票した」と思い込んでいる。
投票した理由を聞けばもっともらしい理由を話すだろう。しかし、脳を見れば、その意思決定はほとんど、無意識下で行われていて、そこに、外部の人間が投票に関する意思決定を操作できるスキが生じるとしたら。

そう遠くない未来に、脳科学的な知見を踏まえて、公職選挙法を改正しなければならない時が来るかもしれない。

これが、脳科学側からの、政治行動の見方である。


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http://www.bigbenn.jp/20151109/1029/

(終わり)

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