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宋文洲のメールマガジンバックナンバー第348号(2018.03.23)
三流の政治がもたらす二流の経済
ここ最近の日本はまさにデータ改ざんのオンパレードです。東芝、神戸製鋼などの企業によるデータ改ざん事件に聞き飽きたところに、日本政府も改ざんの実態を露呈し、世界を驚かしました。
昔、「経済は一流、政治は二流」と日本の方はよく言いました。そう言いながらどこか「経済一流」に対して政治が少々遅れていても我々民間は気にせずやっていける覇気を感じました。私はそういう政治と関係なく独自の力で世界に打って出る日本人の気迫に尊敬の念も持ちました。
しかし、ここ20年間、日本企業の総合競争力が落ちる一方であることは皆さんもご存知の通りです。中国などの新興国との差は別として先進国の中で成長力が最も欠けているのは日本なのです。これは一人当たりの国民実質所得が如実に語っています。G7の中で97年からずっと実質所得が落ちていくのは日本だけなのです。
ここまで来たらもはや経済だけでは解釈できなくなってきました。政治体制に抜本的な問題があるのではないかと考えてしまうのです。
皆さんはすぐ自分たちは米国と同じシステムだと考えるのですが、これこそ落とし穴です。コンプライアンスや経営体制がピカピカだったはずの東芝はなぜあんな大規模なデータ改ざんができたでしょうか。経営理念も管理システムも立派でありながら長期間にわたって偽装や改ざんに手を出す会社がなぜこんなにも多いのでしょうか。
私が安倍政権を批判してきた理由もここにあります。アベノミクスや三本の矢をはじめ、「世界の真ん中で輝く」、「一億総活躍」などの幼稚に近いスローガンを次々に打ち出してきましたが、時間をかけてプロセスを観察すると実際に日本経済の構造問題にいっさい手をつけていないことが分かります。日銀にどんどん資金を出させ、株もどんどん買わせ、低失業率や株高を演出してきました。そのおかげでダメな企業も生き残り、新規産業が生まれず、経済の活力がどんどん衰退していきます。
政権の人気を維持するために自ら消費税を上げる貴重なタイミングを捨てました。その時に使った言い訳は「今はリーマンショックに相当する状況にある」です。前日まで自分のおかげで景気回復したと言いながら、増税時期を伸ばすためならば、翌日に「今はリーマンショック相当」と言うのです。
ここ最近暴露された財務省による公文書改ざん事件はまさに同じ延長線上のことです。不都合を隠すためならば、日銀だろうが財務省だろうが警察庁だろうがマスコミだろうが経済界だろうが、安倍政権は直にキーマンにアクセスしてきました。戦後の歴代政治家が遠慮してきたタブー、つまり米国型民主主義ではなかなか手を出してはいけないところに手を伸ばしてきました。当然この中に合法的な部分もあればグレーな部分もあります。そしてとうとう真っ黒な違法な部分についても証拠が掴まれました。
森友学園の土地の値段を見れば誰でも分かります。そんな値段で買えるならば、誰でも買いたいのです。籠池氏が希望する価格を丁寧に聞き出し、それに合わせるためにゴミのデータを偽造しました。現場から本省まで一体となって頑張るのです。石橋を叩いても渡らないまじめなサラリーマン官僚がなぜそんなタブーにチャレンジしなければならないのでしょうか。名誉園長の安倍夫人が何らかの方法で関わっていなければ、誰にそんなモチベーションがあるのでしょうか。
「財務省がやりました。私は関係ありません。」これは東芝の元社長が改ざんについて「経理部がやりました。経理部長を処分します。私は関係ありません。」と言っているのと同じです。皆さんはどう思いますか。一部の人は「まるで途上国です。」と言うのですが、途上国を侮辱してはいけませんよ。これはシステムの問題というよりも、もう人間性の問題でしょう。さすが火中の麻生財務大臣はG20を欠席しました。行ったとしても彼が読みあげる財務省官僚が作ったデータや文章は、信憑性が薄いと、誰もが思うでしょう。
安倍総理と麻生財務大臣のこの姿勢はまさに世界的に嘲笑されました。逆に総理と仲良くしてきたマスコミや大企業のトップも同様な姿勢ではないかと思ってしまうのです。困難な改革や長期目標から逃げて好きな部下とパートナーに囲まれて好きなことをする。しかし、不都合があればすべてそれを部下に押し込み、責任逃れします。これこそダメな企業の典型です。
私は安倍政権のこの体質を数年前から批判してきました。反日になったと言う人もいますが、いっさい気にしません。それは安倍政権を支える一部の偽右翼の口癖です。こんなデータや事実を平気で自分の欲望に合わせる人は過去の総理大臣にいないはずです。皆さんはたぶんお金に関わることが私欲だと思うのでしょうが、人間の一番の私欲は自己満足欲と自己顕示欲です。憲法改正(憲法改ざんというべきかもしれませんが)を含む彼の顕示欲のために、彼がやってきたのは改革ではなく改変や改ざんです。
日中関係で言えばこんな改ざんが好きな総理の下で尖閣諸島の問題や歴史問題の折り合いがつく訳がありません。あれだけの公文書を改ざんし、頑として非を求めない政権ですから、日中領土交渉の公文書を好きなように変えないわけがありません。敗戦後に旧官僚によって不都合な公文書が破棄された中、安倍政権が過去の歴史に対して素直に事実を調査し他国の公文書を確認する訳もありません。
安倍政権が日本に与えた最大の損害は経済改革の機会損失ではなく、日本国家の信用損失であることは、時間が立てばたつほど露呈してくるはずです。データと文書を改ざんし、責任を部下に押しつける。そんなことをやっていいんだという日本国家の印象を世界中にばら撒いています。まさに三流の政治がもたらす二流の経済です。
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